がん誤診。がんの手術をしたのに、がんがない?!がん診断の落とし穴

がんを根治するためには早期発見・早期治療が必要といわれるが、がんといわれて手術をしたのに、「がんがありませんでした」といわれるケースがある。患者さんはたくさんの恐怖と闘ってきたにもかかわらず、がんがない、ってどういうこと?と医療機関への不信感でいっぱいになる。あり得ない話と思われるが、医療現場では一定の頻度で起こっていることである。なぜこんなことが起きるのか。原因は、がん診断に複数の医師が関わるところにある。

 

乳がんといわれたのに、乳房を切除後に、がんがないといわれたケース

 例えば、乳がんがある、といわれるまでには複数の検査が行われる。しこりがあることに気づいて外科に行き、マンモグラフィ、乳腺超音波検査、医師の視触診を受ける。ここで、それぞれの検査で良悪性の可能性を考え、医師は総合的に、しこりが悪性の可能性が高いと判断すれば、さらに針で刺す検査(針生検、マンモトーム等)に進む。針で刺す検査では、しこりに針を刺し込んで塊としてしこりの一部を取ってくる。ここまでは、外科医が行う。外科医がとってきたその塊を、病理医が受け取り、顕微鏡で観察してがん細胞があるかどうかを評価する。必要であれば、塊に特殊な染色を行ってがん細胞の有無や特徴等を評価する。病理医が「がんがある」と判断すれば、その結果は外科医に報告され、外科医はしこりががんであると考えて手術等の治療を行う。手術でしこりを取り除き、再度病理医に渡される。病理医は、しこりががんであること、大きさ、分布、がんのタイプ等を再評価し、その結果、手術後の放射線、抗がん剤などの治療方針が決まっていく。

 

誤診はどうして起こるのか?

 この流れの中で、いくつかの問題が起こると、良性が悪性に、悪性が良性になってしまう。例えば、初めに診察した医師が、がんの可能性が低い、と考えれば生検をしないまま、がんが大きくなる。経過観察も行わず放置されると、見つかったときには相当大きくなってしまっている、ということが起こる。別のケースでは、初めに診察した医師は、がんの可能性があると考えて生検を行ったが、しこりの真ん中部分の組織が取れておらず、顕微鏡を見た病理医が「悪性なし」と評価してしまうと、がんであるのに、良性ですよ、ということになってしまう。さらに、生検が適切に行われたが、がん細胞が少なく、病理医が幹細胞を見つけることができないときにも「悪性なし」といわれてしまい、生検した外科医は、良性のしこりだったのか、と思ってしまう。反対に、がんでない組織を病理医が「がん」だと診断してしまえば、外科医はがんだったのか、では手術を、ということになってしまう。いずれのケースも実際にあったケースである。

 担当医と病理医の連携が不足していると、誤診のリスクは非常に高くなる。