胸のレントゲンにあった肺がん陰影の見落としについて慰謝料を認めた

富山地裁判決 平成661日 判時1539118
肺がんの見落とし症例は、大多数が他の目的で撮影された胸部レントゲン写真に偶然写っていた肺がん陰影である。胸部レントゲン写真は、定期検診、全身麻酔手術をする際にはほぼ全例撮影されることもあり、医療機関が、胸部レントゲンのチェック体制をどこまで構築しておくべきか、が問題になってきている。
上記判決では、定期健診での胸部レントゲンのチェック体制について、医師の注意義務には限界があるとしながら、患者の早期発見治療の機会を奪われたこと、死期を早めたことに対して慰謝料を認めた。

肺がんの見落とされやすいケースとしては、見落としやすい部分に陰影があった場合、良性疾患の背景があり読影が難しい場合、異常がない前提での集団検診の場合、等がある。 見落としやすいケースでは、医師の責任を認めていないケースが多い。喫煙歴あり、肺にもともと良性の陰影がある場合では、肺がんの陰影が出現しても見えにくいが、喫煙、肺線維症など肺がんのリスクが高い場合には、肺がんを念頭に置いた読影が必要と判断されて、医師の責任を認めているケースもある(松山地裁 平成12224日)。また、集団検診では、疾患の疑いがあって撮影される場合と比べて具体的疾患を発見する際の注意義務よりも低い注意義務であるとして、集団検診での読影の限界を理由に医療機関の責任を認めないケースが多い。一方、比較読影をするなどの場合には、医師が何らかの異常を前提にして、比較読影をすることになったのであるから、このような注意義務の軽減は認められず、一般的に医師に要求される注意が必要だとされている。

胸部レントゲン写真の読影ミスといえるかどうかは、レントゲン以外の情報、今までの経過や症状、レントゲンを撮るに至った理由等によって、注意義務の内容が決まってくると考えられる。