Home 9 判例 9 消化器手術後の縫合不全について、経過観察を怠って発見が遅れたとして医師の責任をみとめた

消化器手術後の縫合不全について、経過観察を怠って発見が遅れたとして医師の責任をみとめた

岐阜地裁大垣支部 平成2年7月16日 判時1368号114頁
胃・十二指腸潰瘍に対して広範囲胃切除、潰瘍部十二指腸切除、ビルロートⅡ法再建の手術を受けた後、白血球数増多、頻脈、発熱、腹痛、吃逆等が認められていたが術後10日目まで再手術されず、16日目に死亡した。死因は、十二指腸盲端部の縫合不全による汎発性腹膜炎であり、発熱・脈拍数・白血球数、吃逆などの症状から縫合不全であることを認識し、直ちに必要な検査を実施して処置を行うべきであったとし、縫合不全の発見と対処が遅れたことについて医師の過失を認めた。

縫合不全は、消化器外科手術では一定の割合で起きる術後合併症である。従来は、医師の責任を認めない傾向があり、縫合不全そのものを医療ミスだとは判断されることは少ない。

医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

この記事を書いた⼈(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。
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