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弁護士 富永が担当した医療訴訟の判決が医療判例解説(医事法令社・2023.6.15発行・104号)に掲載されました。

2023年07月12日 | メディア掲載, 新着情報

弁護士 富永が担当した、京都地裁令和3年11月9日判決が医療判例解説の指標事例No.4として掲載されました。

「右肩関節脱臼の整復時、腕神経叢(そう)ブロックの過失によって局所麻酔薬中毒となり、呼吸停止等から低酸素脳症に至ったとして損害賠償を求めた事例」

事例の概要

患者さんが肩関節の脱臼で整形外科クリニックを受診した際、医師は超音波ガイドを用いることなく局所麻酔薬による腕神経叢ブロックという方法で整復を行いました。
患者さんは眠気を訴えていびきを発するようになりましたが、医師や看護師は局所麻酔中毒の可能性を考えるべきところ、何の対応もせず車椅子に乗せて整復後のレントゲン写真を撮ったりしていました。
その後、意識がなくなり、呼吸が停止しました。クリニックでは、局所麻酔中毒に対する準備が全く行われていなかったために、呼吸が止まったときに酸素を送り込むバッグ・バルブ・マスク(アンビュー・マスク)もなく、心臓が止まってしまったことに驚いて救急車を呼びました。救急車で別の病院に搬送されたときには、長時間、脳に酸素が不足したことによる低酸素脳症で寝たきりになってしまい、その後、お亡くなりになりました。

掲載された際の「専門医のコメント」を読んで

■麻酔科専門医のコメント
「本件当時、超音波診断装置ガイド下にて腕神経叢ブロックを実施するのが医療水準といえ、傾眠傾向が見られれば、局所麻酔薬中毒の可能性を考え、厳密にバイタルサインの経過を診なくてはならない」

腕神経叢ブロックの手技については、本来であれば超音波診断装置の使用や、X線透視下で確実に実施されるべきところ、「本症例で行った腕神経叢ブロックの盲目的手技は、本件当時であっても一般的な方法ではないと思われます。」とのコメントや、局所麻酔薬中毒に対してのクリニックの対応についても、「医療側の対応としては完全に手遅れ」とコメントしています。

このケースは局所麻酔薬を使った際に、局所麻酔薬を投与するブロック注射の方法、量、中毒症状出現後の対応などが問題になりました。当方が問題であるとして指摘した点が、客観的に考察された専門医からみても問題であったとの所見をいただけたことは大変意味深いと感じています。

 

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