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出産時のトラブルがあったら

2017年05月16日 | コラム

 出産時のトラブルは、本来幸せな瞬間に予期せぬ結果が生じるため、悲惨です。早く帝王切開手術してくれていれば助かったのに、というトラブルは今も多いです。出産時のトラブルは、医療機関にとっても患者さんや家族にとっても望ましいことではないため、産科医療補償制度ができて8年経ちました。

 産科医療補償制度とは、公益財団法人日本医療機能評価機構が運営する、わが国初の無過失補償制度です。本来、医療機関の責任を追及するためには、医療機関に過失(本来行うべきことを行わなかった事実)があることを、患者さん側が立証して初めて補償されます。これに対して、「無過失補償」では、ある一定の結果が起こった場合に、過失の有無を問わずに補償をする制度であり、他のどの科にもない患者救済制度になっています。

 この制度が発足して8年が経過したにもかかわらず、まだ制度が十分に浸透していないため、請求できる患者さんや家族が気付いておられないこともあります。請求できるのはお子さんが満5歳になるまでです。妊婦検診の途中で、無過失補償制度の書類にもサインをしていることが多いと思います。出産時にお子さんに麻痺が残ったケース等では、担当の産婦人科医に相談されることをお勧めします。

 

産科医療補償制度の適応範囲は?

 産科医療補償制度は、本来、脳性麻痺に至ってしまった場合に患者さん側を救済するために設立された制度です。そのため、出産時に医療機関側の対応に問題があるケースでは、この補償制度とは別に、裁判手続きによる損害賠償請求を行うこともあります。この補償制度による補償を受けたからといって、医療機関への責任追及ができなくなるわけではありません。産婦人科医師や小児科医師がどんなに頑張っても残念な結果になってしまったケースは無過失補償制度が役に立ちます。しかし、産婦人科医師の処置に問題があった場合には、その過失を立証できれば、医療機関側に責任追及ができます。また、無過失補償制度は、母体に生じた問題はカバーしてくれません。出産時に、母が亡くなったケースや、母が寝たきりになってしまった、下半身不随になってしまった、等のケースでは医療機関側の責任について検討することが必要になります。

医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

この記事を書いた⼈(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。
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