がんの見落としに関する相談は非常に多いです。医療が進んだ今でもがんは死に直結する病気ですので、なぜ早く見つけてくれなかったのか?と問題になるのは当然です。
法律的には、がんの診断と治療に関して、初期段階なのか、進行段階なのか、再発なのか等によって問題点が変わってきます。
がんの初期の問題点は?
がんの初期、検診や診察に行ったにもかかわらずがんを見つけてもらえなかった、というのが典型的ながんの見落としのパターンです。このケースでは、その時に診察を行った医師が、がんを見つけることができたかどうか、見落としだ、といえるかどうかが問題になります。患者さんからすれば、その後にがんが見つかったとすると、さかのぼって「あのときにもがんがあったのに、見つけてもらえなかったのでは!?」と思うことは当然です。何らかの症状があった場合や、画像検査を行っているケースでは、良く見るとがんが映っている、ということもあります。そのような場合には、同じ科の平均的な医師であれば見つけられただろう、という場合に、見落としがあった、ということができます。難しいケースは、よーく見るとがんのようにも見えるものが映っているが、がんかどうかは判断できない、という段階です。がんは、急に姿を現すわけではありません。そのため、各臓器で、特徴的な「癌だ!」といえる形になるまでに数カ月から数年の時間がかかります。その途中の、まだがんらしい顔つきをしていない段階でいかに早くがんを見つけるか、というのが、がんを扱う医師の研究対象になっていますが、各検査の限界もあります。見落としといえるかどうかは、結局、他の医師の意見を複数聞いてみなければわからない、ということになります。
がんの進行段階の問題点は?
がんが一定程度進行している段階での見落としは、様々な症状が出現しているにもかかわらず適切な検査をしてもらえなかった、明らかに画像に映っているのに良性といわれた、病理検査ではがんと診断がついているのに主治医がその報告書を見ていなかった、などがんの見落としが明らかであることが多いです。誰が見てもがんなのに、がんと診断できなかったケースです。この段階では、なぜがんと診断できなかったのか、その理由が医師同士の連携不足であったり、研修中の医師であったり、医療機関に問題があることが多いです。
がんの再発以降の問題点は?
完治する再発であれば、早期に診断して早期に治療することが重要です。しかし、多くのがんは再発後、完治することが難しいため、早期発見をしても治療方法は大きく変わらないことが多いです。この段階では、いかに苦痛を取り除いてもらうか、がんに伴う症状の緩和に関する相談も多く、法律的には、精神的な苦痛に対する慰謝料が問題になります。