人工呼吸管理での低酸素症について、医療機関の責任は?
大阪地裁 昭和62年1月30日 判例タイムズ651号187頁
人工呼吸器に接続されていた患者の蛇管の接続が外れていた際に、患者家族が接続しなおし、その接続が不十分であったために患者が低酸素脳症になった。このケースでは、家族が呼吸器の接続をし直すという予測できない状況にあったとして、そのような状況を予測して監視・指導する義務が認められないとされた。
このケースは、家族にとっては、直したばっかりに医療機関側の責任が問えないという理不尽な結果になっているが、昭和55年のケースであり、今日では、蛇管にトラブルがあり有効な人工呼吸管理ができていない場合には、レスピレーターの警報アラームが作動するはずであって、そのような管理をしていなかった医療機関に責任があると判断できるケースだと思われる。
その他に、呼吸器の接続については、名古屋地裁 平成12年7月19日 判時1741号124頁では、術後にARDSに対して人工呼吸器で管理されていた患者の気管チューブが外れ、一時的に心停止になったケースについて、医師・看護師の気管チューブの確実な装着の確認を行わなかったという安全配慮上の過失があったものといえる、と判断している。