注射器の使用による神経障害について医療機関の責任を認めたケース、認めなかったケース

注射針による神経損傷はよくあるケースである。前腕の静脈から採血を行う際に、前腕皮神経の損傷したケースで、患者が痛みやしびれを訴えたにも関わらず同じ部位に注射針を挿入して点滴したのち、左前腕に神経障害が残った場合には、患者のしびれや電撃通が走った場合には直ちに注射を中止する必要があり、同部に挿入することは避けるべきとして医療機関の責任を認めている。
肘関節上部外側に点滴を行った際に橈骨神経麻痺を生じたケース(名古屋地裁 平成14315日 判時1796133頁)では、橈骨神経が走行している部位には、橈骨神経麻痺を生じないよう十分注意するべきだとして医療機関の責任を認めている。
一方、前腕部の注射時に正中神経を損傷したケースで、神経損傷の診断が注射から長期間経過後(4年後)であった場合には責任を認めていない。

注射による神経損傷は、しびれ・痛みといった患者の主観的症状の訴えが診断根拠になるため、クレーム的であると考えられる場合には、医療機関の責任は認められていない。一方、注射の際に、患者が激痛やしびれを訴えていたにもかかわらず、対応していないケースでは、責任を認められやすい。