分娩監視義務に違反して医師の責任が認められたケース

福井地裁 平成15924日 判時1850103
出産時の分娩監視義務については、多数の判例の集積がある。従来の判例では、分娩監視装置によって継続的監視が行われていれば、分娩監視を行っていたと判断されることも多かったが、今日では、胎児心拍数異常を認めている以上は、原則として分娩監視装置の継続的装着が必要と判断され、分娩監視に代わるのは、常時胎児心拍を聞き、陣痛発作の状況を観察し続けることだと判断される傾向にあり、分娩監視装置の連続装着が基本になってきている。
上記判例でも、胎児心拍数基線細変動がほぼ5bpm以下で減少・消失しており、一過性頻脈がなく、比較的高度な徐脈が見られた状態で、継続的に胎児の状態を観察するとともに酸素投与などの母体への治療を行い、それでも胎児状態が悪化するようであれば直ちに急速遂娩を行うことができるように、慎重に経過観察を行う義務があったとして、分娩監視装置による監視を終了した医師の過失を認めている。
同様の判例は多いが、低リスクで緩やかな分娩経過であったケースでは、分娩監視装置による継続的観察が必要ではなかったと判断したケースもある。例えば、岡山地裁倉敷支部 平成12511日 判タ1084242頁では、低リスク妊婦で、入院時モニタリングで異常を認めず、陣痛微弱で分娩経過が緩徐であったことを理由に、分娩監視義務を認めなかった。

現在、日本産婦人科学会のガイドラインでは、基線細変動、一過性頻脈、徐脈の評価を5段階で評価し、急速遂娩の準備をすべき3以上のレベルを客観的に判断できるようになっている。このガイドラインに従った処置を行わなかった場合には、特段の理由がない限り、問題ある処置と判断されることが多くなっていくと思われる。また、新生児蘇生についてもガイドラインに沿った処置が勧められている。両ガイドラインをもとに、各ケースの事実の評価をすることが必要になる。