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【沖縄地方】沖縄の総合病院にて後縦靭帯骨化症(OPLL)の手術を受けた患者が手術方法・選択ミスのため重い後遺症を残したことにつき8000万円の裁判上の和解が成立した事例

医療ミスの事案概要

 九州沖縄地方の脊椎専門医がいる総合病院において、下肢の痛みやしびれなどを訴えて受診した患者さんが後縦靱帯骨化症(OPLL)に伴う脊椎の高度な脊柱管狭窄および脊髄圧迫と診断されて手術を受けました。手術方法の選択に誤りがあり、手術直前まで自分で日常生活が出来て自立していた患者さんが、手術直後から両下肢の完全麻痺・膀胱直腸障害などが起こり、日常生活に全介助が必要な状態になり現在も重い後遺症は回復していません。
 病院は「ミスはない」として話し合い(示談交渉)に応じず交渉が決裂したため、訴訟を提起し、裁判所が病院の責任をほぼ認める内容の8000万円で裁判上の和解が成立しました。

法律相談までの経緯

 医師に勧められて手術をしたのに術直後から両足が全く動かない重い後遺症が残ったことから患者さんやご家族は、手術やその後の対応に強い疑問を抱き、今後の生活のために病院や執刀医に対して補償をしてほしいと考えていました。手術の後になって執刀医は謝りに来ましたが、病院はミスはなかったと説明し、いずれ治るからリハビリをしなさいというだけでした。必死でリハビリをしましたが立つことはできず、車椅子の生活になり、自分で排尿も出来ず尿バックが必要になりましたが、それでも医師達はいずれ治るというような説明を繰り返しました。
 患者さんとご家族は、当初は地元沖縄県や九州の弁護士さんのところまで法律相談に行かれたそうですが、医療裁判は止めた方がいい、勝てるはずはない、県内で裁判をしたら行ける病院が無くなる、狭い世界だから病院を訴えられない等といわれ交渉を引き受けてくれる弁護士さんは一人もいなかったそうです。一方で、病院からは弁護士をつけなければ話合いもしないといわれてしまい、改めて医療事故を扱っている法律事務所をインターネットで探され、当事務所にご連絡がありました。既に事故から何年も経って患者さんは施設への入所を余儀なくされていました。

相談後の対応・検討内容

 まず詳しいお話を聞くためにテレビ電話でご家族から事情を聴きました。患者さんが介助を必要とする状態になったことで家族皆の生活が、経済的に極めて大変な状況に陥ったことも伺いました。遠方である大阪の弁護士に依頼することについて、一番心配されていたのは費用でしたが、当事務所ではカルテ調査費用や交通費・日当、実費等を患者さんに請求することはないことをお伝えしました。患者側の医療専門弁護士がいない沖縄でこそ当事務所としても戦う意義があると感じましたが、相談当初は、本当に勝算があるのかカルテを十分検討しなければわからないことも率直にお伝えしました。カルテなどの検討後、戦える見込みがあると判断した上で受任したい旨をお伝えしました。
 まず、カルテ調査や患者様の診療経過や医療機関の対応に問題がなかったかを検討するためカルテの精査が必要であることを説明しました。ご家族はすでにカルテを取得されていましたが、開示されたカルテには加筆や修正をした履歴が含まれていないものでした。また対象期間も限定されたものでしたので、そのため、より正確に事実関係を把握するために、初診時からのカルテすべてについて加筆修正履歴も含めて再開示を行いました。
 再開示をする際に気を付けたこととして、ご家族でカルテの再開示手続はできるというお話でしたが、当事務所でお手伝いをしました。ご家族の作成する開示請求書の下書きを作り、加筆修正履歴を含めることや関連資料についてもすべて開示してもらえるよう、「開示を求める資料の一覧」を具体的に記載した別紙を添付して申請していただきました(カルテ開示について)。
 その後、入手したカルテの詳細な調査を行いながら、日本のガイドラインや厚生労働省の研究班による20年間の研究の推移、最近の専門医試験問題、英語論文での発表等について時間をかけて検討し、診療経過や手術前後の対応、医療機関の説明内容などについて法的に過失といえるか、その証拠が十分あり戦えるかどうかの検討を進めました。
 一般的に、脊椎の手術は、術前術後の変化に患者さん自身が気付くことができるため、医療ミスではないか、と気づきやすいケースが多いと思います。ただ本当に医療ミスといえるのか、担当医師の手術ミスがどこまであるのかを慎重に検討しました。

後縦靭帯骨化症について

概要

 後縦靱帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)(OPLL:Ossification of the Posterior Longitudinal Ligament)というのは、本来は柔らかい背骨の中にある「後縦靱帯」という組織が徐々に靱帯が骨のように硬くなり、神経を圧迫してしまう病気です。国が定める指定難病にもなっています。
 後縦靱帯は背骨を支える役割を持っていますが、この靱帯が骨化すると、脊髄や神経が通るトンネル(脊柱管)が狭くなります。その結果、脊髄や神経が圧迫され、手足のしびれや痛み、筋力低下、歩行障害などの症状が現れることがあります。
 骨化が起こる場所によって、首の部分で起こるものを「頚椎後縦靱帯骨化症」、胸の部分で起こるものを「胸椎後縦靱帯骨化症」、腰の部分で起こるものを「腰椎後縦靱帯骨化症」と呼びます。
※難病情報センター(https://www.nanbyou.or.jp/entry/98

後縦靭帯について

 背骨と脊髄の関係を模式的に示すと下の図のようになります。横から、上から、後ろから見た図になります。黄色い部分が脊髄神経です。脊髄を取り囲む靭帯が、年齢と共に次第に固くなり分厚くなってしまうことで、脊髄が圧迫されて症状が出ます。靭帯が骨化する原因はまだ明らかになっていませんが、遺伝的な要因もあるといわれています。
後縦靭帯と脊髄の位置、横から見た図、上から見た図、後ろから見た図

治療方法

 後縦靱帯骨化症の治療では、まず症状の進行を抑えたり痛みを和らげたりするために、首の装具(カラー)の装着や薬物療法などの保存的治療が行われます。
 保存的治療で十分な改善がみられない場合や、手足のしびれや筋力低下、歩行障害など脊髄や神経の圧迫による症状が強い場合、急激に悪化していく場合などには、手術による治療が検討されます。時間的にゆっくりと進行する病気であるため、主治医の先生としては、まずは手術以外の治療が出来ないかを十分試してから、どうしても手術が必要になった場合には、患者さんと一緒に、手術をするメリットやデメリットを考えながら決めていくことが多いです。
 手術では、骨化した靱帯によって圧迫されている脊髄や神経を解放することを目的とします。硬いものによる圧迫を取り除く方法は、前から、後ろからと様々あり、骨化の程度や場所、脊椎の状態などによって手術方法は異なります。首の後ろ側から脊柱管を広げる手術が多く行われ、専門的な医療機関では、技術的に難易度が高い方法である前方から骨化した部分を取り除いて固定する手術なども行われています。

 OPLLを含む脊髄が圧迫される病態に対する手術方法しては、脊椎の前方からのアプローチ(前方除圧法)と後方からのアプローチ(後方除圧法)に大きく分けられますが、どちらを選択するかについてもドクターと相談しながら決めることになります。
 脊椎病変に対する手術の意義は、
 ・除圧(decompression:デコンプレッション)…圧迫を取り除くこと
 ・固定(fusion:フュージョン)…今後も悪化しないようにすること
 ・矯正(correction:コレクション)…歪んでしまった背骨の傾きを治すこと
  などが基本になります。

多く行われている手術方法のいくつかを紹介します

①椎弓形成術(ついきゅうけいせいじゅつ)
 脊髄の後方(背中側)から脊椎に到達し、棘突起(きょくとっき)、椎弓(ついきゅう)、黄色靭帯(おうしょくじんたい)を切除して脊柱管(せきちゅうかん)内を露出する手術です。
 椎弓の一部(骨や靭帯)を切除して脊柱管を広げ、脊髄の圧迫を和らげる手術術式の一つで、椎弓切除術は脊髄の背側にある椎弓という部分を切除することで脊髄の圧迫は取り除け、除圧はできますが、後ろの骨を削るため脊椎が不安定になりやすく、安定性の低下が起こることがあります。そのため、最近では椎弓を切除することなく脊柱管を拡大する様々な椎弓形成術(ついきゅうけいせいじゅつ)が広く行われています。骨を完全に取り除かず、ドアの蝶番のように片方に開くようにして小さな金属で留める方法や、両扉のように骨を開いて留める方法などが考案されています。よく動く首では、安定性を保つことは重要であり頸椎後縦靱帯骨化症で選択されることが多い術式です。

②脊椎固定術(せきついこていじゅつ)
 脊椎固定術とは、不安定な脊椎に対し、しっかりと支えられるように金属の棒をいれて固定する手術です。自分の骨(自家骨)を使用して固定する方法もありますが、人工的な椎弓フック、スクリュー(ネジ)とロッド(金属の棒)を使用した、脊椎インストゥルメンテーションといわれる方法が一般的です。金属のねじと棒を背骨に着けてしっかり固定する方法です。
 脊椎の後側や後側方要素間を固定する方法と、前方の椎体間を固定する方法があります。
 ・後方固定術:後方(背中側)からアプローチする脊椎固定術です。
 ・前方除圧固定:骨化が大きく椎弓形成術による脊髄後方からでは脊髄の圧迫が解除されない難しい症例で選択されることが多いです。
 ・後方、前方又は前方+後方など固定の併用
胸椎後縦靱帯骨化症の外科的治療では骨を取り除くだけでは脊髄の圧迫が介助されにくいため、病変の部位(高位)や骨化の形態(嘴状又は台形)に応じて固定術を併用しなければならない症例があります。
 これらの様々な治療法のどれを選択するのかは、患者さんの靭帯の状態や脊髄の状態、年齢や今後の生活状況などを総合的に判断して決めなければなりません。
 通常は、主治医と十分相談してから決めていきます。

後縦靱帯骨化症の診療ガイドラインについて

後縦靱帯骨化症の診療では、日本整形外科学会などが2019年に作成した「脊柱靱帯骨化症診療ガイドライン」が参考にされています。

ガイドラインとは?

 医療の現場では、科学的な根拠(エビデンス)に基づく医療が求められている昨今ですが、各々の医療者が膨大な医療情報を習得して実践することは現実的ではなく、各分野の専門家たちが医学的知見や研究結果をQ&Aなどにして、検査や治療について現時点で推奨される方法をまとめた指針を作り、実際に患者さんを診察するドクターが活用できるようになっています。その指針がガイドラインです。日々の診療の判断材料の一つとして、ガイドラインは様々な診療科で活用されています。特に整形外科の中でも脊椎の分野では、ガイドラインによって適切な治療指針が比較的明確に定められています。

 どんなガイドラインがあるのかを調べるときには、公益財団法人日本医療機能評価機構が行っている事業として「医療情報サービスMinds(マインズ)」というサイトがあります。「Mindsガイドラインライブラリ」の名称で知られ、数多くの診療科の診療ガイドラインが公開されています。Mindsは診療ガイドラインを「健康に関する重要な課題について、医療利用者と提供者の意思決定を支援するために、システマティックレビューによりエビデンス総体を評価し、益と害のバランスを勘案して、最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義しています(Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0)。

 後縦靱帯骨化症においても、保存的治療を行うべき場合や手術を検討すべきタイミング、適切な手術方法などについて、ガイドラインに沿った考え方が示されていますし、ガイドラインに沿っていない治療方法を選択するときにはその必要性などを十分に患者さんに伝えて患者さんが納得してからその治療法を行わなければならないことになっています。

裁判でもガイドラインは参考にされるの?

 診療ガイドラインは医療訴訟でも活用されています。証拠としても提出することも多いです。
 医療事故や医療訴訟(医事紛争)でガイドラインはどう使われるのか?という点について、医療機関の診療内容が適切であったかを検討する際に、診療ガイドラインの内容は裁判官が様々な決定をする際の重要な判断材料の一つとなります。ガイドラインの初めのところにガイドラインを「医療裁判では使わない」というような言葉が書かれていることもありますが、実際には、裁判では、世の中にある全てのものが証拠として活用されることが認められています。ガイドラインを作る方はそのようなことを知らない方が多いのかもしれませんが、実際にはガイドラインが存在している場合には、裁判官もガイドラインに強い関心を寄せていると感じます。
 裁判官は、ガイドラインに書いているからといって書いている通りのことを認めるわけではありませんが、専門家たちが何の目的で作ったガイドラインかを慎重に検討しながらも、専門家がどの様な指針をなぜ作ったのかを考えて判断の参考にしているという印象です。

弁護士の対応(示談交渉・訴訟提起)

 本件では、当事務所で再開示したカルテを検討し、その結果、患者様は手術前には日常生活動作が自立しており、歩行器を使用しながら歩行することも可能であった一方、手術の直後から両下肢麻痺や膀胱直腸障害が生じ、回復しないまま重篤な後遺障害が残っていることが確認できました。
 さらに調べた資料や画像所見をもとに医学的な検討を重ね、手術方法の選択や術中管理等について詳しく検討を要する問題があると考えられました。そこで脊椎外科の専門医にも協力を仰ぎ、その意見も参考にして診療経過や画像所見を詳細に分析し医療機関側の責任の有無について検討を行いました。
 最終的には医療ミスがあり、それを証明する証拠も十分あると考えられたため、正式に患者さんと受任契約を結び、医学的・法的な検討結果を整理し医療機関に対して損害賠償を求める通知書を送付して交渉を開始しました。
 しかし、病院側からは「本件手術については、手術方法の選択及び手技のいずれについても過失は認められず、担当医師及び病院に法的責任はない」との回答があり責任を認めず、全面的に争う姿勢でした。相手方の代理人とは何度か電話で話す機会がありましたが、どうせ大阪から沖縄までわざわざ裁判しに来ることはないでしょう?という相手方の思惑が透けて見えました。
 当事務所としては収集した医学的証拠や専門医の意見に照らして病院側の対応には法的責任が認められると判断し、さらに先の手続として裁判をする意義があると考えられたため、患者様及びご家族と協議のうえ損害賠償を求める訴訟を提起することとしました。

弁護士の対応(訴訟)と弁護士のコメント

 訴訟提起は裁判所に訴状を提出し裁判手続を通じて相手方に損害賠償等を求めることであり、訴訟を行うには病院がある所在地か患者さんの住まいの地方裁判所に訴状を提出しなければなりません。
 本件では那覇地方裁判所での裁判手続となりました。

 最近は裁判にもウェブ会議システムが活用されるようになり、全国どこの裁判所でも当事務所から裁判期日に参加することが可能となりました。しかし、本件では患者さんやご家族が、裁判手続に出来る限り参加したいご意向でしたので、弁護士が期日毎に裁判所へ本人や家族と一緒に出頭しました。患者さんやご家族に可能な範囲で裁判手続に参加していただくことができ、裁判官と直接、話したり、相手方弁護士の言動や態度も含めて患者さんと経験を共有しながら進めました。
 訴訟の終盤には患者さんご本人から裁判官に対して、直接ご自身の思いを伝える機会も何回かありました。手術前には歩行でき家族のために働くことができたこと、手術後には重い後遺障害が残り家族に迷惑をかけることが一番辛かったこと、本人だけでなく家族皆の生活までも大きく変わってしまったこと、そして今後の生活や経済的負担への不安について、ご本人の言葉で直接、裁判官に伝えてもらいました。被害に遭われた本人の実際の現状を、裁判官に直接伝えられたことは、患者さんにとっても非常に貴重な経験だったと思います。
 通常は、弁護士と裁判官だけで進めることの多い裁判手続ですが、医療裁判では、他の裁判と異なり、被害に遭われた本人やご家族が裁判の場に参加する意味は大きいと思っています。弁護士はご本人の代理人ですので弁護士だけでも裁判手続は進められますし、無理に出廷する必要はありません。しかし、今回の裁判では、ご本人やご家族が、一生に一度しかない裁判に参加したい、というご希望もあり、車椅子で大変な毎日の中、ほぼ全ての期日に参加してもらうことが出来ました。
 裁判官も人ですから、患者さん達がおられるところでは(私たち弁護士に対して話すような早口ではなく)言葉を慎重に選び、できるだけ丁寧にゆっくり話そうと心がけてくれる場面が多かったように思います。

 裁判手続としては、病院側から、こちらの主張を覆すような証拠資料、医学文献などがあまり提出されないまま手続が進みました。こちらは脊椎専門医の意見書を、お二人の医師に書いてもらって提出しました。それに対し、病院側からも専門医の意見書が提出されました。しかし、病院側の意見書を書いたのは病院の理事長の元研修指導医の医師であり、公平公正な立場の意見とは到底言えないものでした。また意見書の内容も、ガイドラインや専門医試験の解答に反した記載があり、脊椎専門医が書いたとは思えないような説得力が乏しいものでした。ホームページなどで見る限り、長年、脊椎外科医としてある地方の後縦靭帯骨化症の患者会活動にも関わっておられる著名な先生でしたが、意見書の内容は患者さんを愚弄する酷いもので、患者はもともと歩けなかったはずだとか、脊椎の手術は難しいものだから仕方がないとか、手術の方法は医者に決める権限がある(医師の裁量)などと書かれていて同じ医師として悲しい気持ちになりました。後縦靭帯骨化症の患者会では意見書の記載とは全く異なる発言をされておられるようでした。こんな意見書を書いている先生だとは知らず、信じておられる患者さん達を気の毒に思いました。自分の患者さんに対して医療ミスを起こさないように祈るばかりです。

 裁判所は、そのような病院側の意見書には重きを置かず、客観的な証拠やこちらから提出した専門医の意見書等の内容を総合的に判断してくれ、話合いによる解決の提案がありました。訴状に記載した請求金額は1億円を超えていたため、こちらの主張の一部しか認められない和解内容でしたが、患者さんやご家族と何度も話し合い早期解決のために裁判所の和解案を受け入れることとしました。8000万円の解決金が支払われる内容で裁判上の和解が成立しました。
 患者さんは、裁判当初は相手方病院への怒りや憎しみが強く、判決をもらって自分の受けた被害を公表し、社会に事実を示すことに拘っておられました。実際に自ら裁判に参加し、裁判官と沢山話せたことで話し合いに応じる気持ちになってゆけたのではないかと思っています。
 裁判上の和解は、裁判所での手続の中で当事者双方が合意し、紛争を解決する方法の一つで判決とは異なりますが、和解内容は裁判所の和解調書に記載され、確定判決と同様の効力を有するものになります。判決の場合には、仮に地方裁判所で一旦勝訴ができたとして、相手方が控訴すれば高等裁判所や最高裁判所まで訴訟が長引く可能性があります。今回は、既に事故から何年も経っていたこともあり早期解決のために和解することになりました。
 訴訟手続を行うことで患者さんやご家族の、今後の生活を支えるための、一定の補償を確保することができて代理人としてもホッとしました。脊椎外科の手術は、様々な術式や専門的な用語が多く、一つ一つ裁判官が理解できるように図を書いたり、写真を貼ったりし書面で説得していくことは簡単な作業ではありませんでした。しかし患者さんやご家族と一緒に、諦めず最後まで粘り強く裁判官に伝え続けたことで、何とか話し合いによる和解に至れたと思っています。
 患者さんがもし当事務所にたどり着く前に諦めておられたら・・・と思うと医療ミスの賠償が不十分な日本の現状には強い憤りを感じます。医療専門の患者側弁護士が、どの都道府県にも、どの地方にも、もっと必要だと改めて強く思った事件でした。

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医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

この記事を書いた⼈(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。
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