相談前
胸腔鏡による気胸手術を受けたところ、術中に出血多量を生じて死亡された悲惨なケースです。当初、他の弁護士が交渉を行っておられましたが、病院側が手術の合併症だとして責任を認めず、訴訟提起した後も手術操作について問題はないとの主張であったため、担当弁護士から当事務所に共同訴訟の依頼がありました。
相談後
依頼を受けてから10時間に及ぶ手術ビデオを呼吸器外科専門医とともに検討し、手術手技に明らかに問題があることが判明しました。裁判所に対して、本来行うべき呼吸器外科手術の基本を説明し、術中出血が生じる原因と、出血への基本的対応法について呼吸器外科専門医の協力を得て意見書を提出したところ、訴訟中に相手方が責任を認めることとなり勝訴的和解による解決ができました。
富永 愛弁護士からのコメント
手術ビデオの検討能力やカルテ調査能力がなければ、相手方の合併症との主張に対抗できず敗訴となっていた可能性もあったケースです。手術は、外科医の技術(アート)といわれる側面もありますが、最低限行うべき基本形は決まっているものも少なくありません。このケースでは、胸腔鏡手術の基本となるべき操作が行われなかったことで、後手後手の対応によって患者様が手術中に死亡するという悲惨な結果に至っていました。
医師の視点で見ればビデオを見て明らかな問題点がわかりましたが、裁判所にいかにその問題点を伝えるか、医療訴訟の難しさも実感したケースです。最終的には、争っていた相手方がご遺族に謝罪のために裁判期日に来庁することも実現し、裁判所の理解によって勝訴的和解に至ることができました。微力ながらご遺族の「真実を明らかにしたい」との思いを実現できたのではないかと感じました。