ケース:リハビリ目的で転院した、70歳男性。脳梗塞後のリハビリ目的の入院であったが、おなかが痛くなり緊急手術をしたが死亡してしまった。患者さんの家族は、以前から胆石があったのに放置されていたのではないのか?という思いで当事務所に相談がありました。初めに担当した弁護士さんは、患者さんの家族の言う「胆石を放置した!」ことに焦点を当てていて、紛争の問題点を理解していない様子でした。
胆石は、ありふれた良性疾患?
胆石は、胆嚢にできる石。たくさんの人がおなかの中に持っていても治療は必要でないことが多いです。患者さんの家族は、胆石があったのに何もしてくれていない・・・と思っていたようですが、胆石がある場合のポイントは、症状(おなかが痛い、熱が出るなど)があるかどうか、です。改めて、その視点からカルテなどをすべて見直し、急性胆のう炎・慢性胆のう炎の有無、放置といえるのか、手術の時期や方法を検討しなおす必要があったケースでした。
患者さん家族の悲しみや、強い思い込みによって、問題点がズレてしまうことはよくあります。医療に詳しくない弁護士さんに当たると、正しい評価ができないこともよくあることです。胆石は、持っているだけでは直ちに病気にはなりません。正しく評価してくれる病院に行くことのと同じように、正しく評価してくれる弁護士に相談することが必要です。
胆石だと思って手術をしたらがんだった、医療ミスといえるのか?
胆石はありふれたものですが、胆嚢癌は非常に悪性度の高い癌です。胆嚢だと思って手術をし、結果として胆嚢癌だったという場合には、手術前にきちんと胆嚢癌の可能性について評価を行ったかどうかが問題になります。胆石だと断定できる画像所見でなく、胆嚢癌の可能性を考えるべき画像所見かどうかが問題になるわけです。胆石の手術と、胆嚢癌の手術は、同じ胆嚢でも異なります。良性と悪性で手術方法が異なるのです。すべての場合に、胆嚢癌を疑うべきとはいえませんが、あらかじめ悪性の可能性も考えて評価する必要がある場合には、医療ミスといえます。また、胆石だと思っていても、手術後に胆嚢の病理検査を行って、がんであることが判明することもあります。その場合には、がんが見つかった際に、さらに追加手術を行うことになりますが、術後にわかった、ということだけでミスといえるかどうかは、術前の状態によります。カルテの十分な検討が必要になることが多いです。