Home 9 解決事例 9 膝の内視鏡による後十字靱帯再建術で血管・神経を損傷され大腿切断となった事例で8000万円以上の和解に至ったケース

膝の内視鏡による後十字靱帯再建術で血管・神経を損傷され大腿切断となった事例で8000万円以上の和解に至ったケース

医療過誤・医療ミス・問題解決事例

医療過誤の事案概要

右後十字靭帯損傷のため、患者様が近畿地方の総合病院で鏡視下右後十字靭帯再建術を受けたところ、担当医師により血管と神経を損傷され、右大腿切断となった事案です。

受任に至る経緯

患者様は、神経や血管が断裂した後の、病院側の説明時期、説明内容などに疑問を持ち、担当医の手技にミスがあったことを察しておられましたが、ご自身で具体的に医学的な問題点を検討、特定することが難しかったため、当事務所に調査や交渉を依頼されました。

受任後の対応

患者様から診療経過や事故前後の症状等をお聞きし、調査に必要な全ての診療録等を精査して、相手方病院医師の過失の内容を特定し、患者様に生じた結果と相手方病院医師の過失との間の因果関係を検討しました。過失や因果関係の検討に際しては、専門医の意見も聴取し、複数の医師が同じ意見であることを確認しました。精査、検討が完了した後、相手方病院に対し、相手方病院医師の過失により生じた患者様の損害を賠償するよう求める内容の書面を作成し、発送しました。

交渉のポイント

本件を含め、交渉のポイントとして当事務所が重視していることは、診療録の記載から、相手方にとって反論の余地がない点を精査し、過失や因果関係を検討することです。
本件では、①骨孔をあける際に骨と手術器具の位置を確認し、慎重に手術器具を挿入、操作すべきであったところ、医師が挿入、操作を誤り、神経や血管を損傷したこと、②血管を損傷した際には、血管損傷から遅くとも8時間以内に血行再建をしなければ下肢切断に至る可能性が極めて高いといわれているところ、本件担当医は、出血を認識していたにも関わらず、出血部位を確認しないまま手術を終了し、迅速な血行再建を行わなかったこと、の2点が重要な過失と考えられました。
上記の過失①②の他、患者様ご本人としては、十分な経過観察や説明がないまま、手術に至った点も、問題と考えておられました。
当事務所としても、後十字靭帯損傷は、保存的治療が可能であって、即時手術を要する病態ではないため、装具を装着して就労や日常生活の状況を数か月観察して、痛みや不安定が強い場合に、手術の相談をすることが一般的であることを考慮すると、手術に至る経緯にも問題があったと考えましたが、患者様に生じた損害との因果関係を考慮して、より重要性の高い過失①②を強く主張する方針としました。
このように、医学的、法律的な検討を行うと、患者様が問題と考えられる点、気になられている点以外にも、損害賠償請求に際し重要性の高い問題点が判明することがあります。
本件交渉に際しても、患者様が問題と考えられている点、医学的、法律的な検討の結果判明した問題点等を全て検討したうえで、最も患者様にとって有利な主張を構成しました。

交渉の結果

交渉に先立ち、どのような過失が、どのような経緯で患者様を下肢切断に至らせたのかを詳細に調査・検討していたため、当事務所から初回通知書を送った後、比較的早い段階で、相手方病院が過失を認める方向で交渉が進みました。損害賠償額については、双方の主張が対立する点が多く、交渉が長期化しましたが、患者様に生じた損害の内容を詳細に聴取し、立証のための資料を準備できたことにより、当事務所に来られる前の患者様の予測を大きく上回る金額での和解が成立しました。

富永弁護士のコメント

下肢切断などの外見上明らかな後遺障害が発生した場合、後遺障害の内容、程度は容易に把握できても、どのような過失が原因となり、どのような経緯で患者様に後遺障害が生じたのかを特定するためには、手術手技や術前、術中、術後管理を理解したうえで、検討、精査することが不可欠です。
当事務所では、医師・弁護士を中心に、病院勤務歴のあるスタッフを含む専門チームが事案を詳細に検討、精査し、事案によっては交渉開始前に専門医ともディスカッションを行い、過失や後遺症が生じた経緯を特定しています。
患者様に生じた損害に関しては、結果から一律の単純計算ではなく、患者様それぞれのご事情を詳細にお伺いし、患者様から各種資料のご提供をいただき、当事務所においても損害に関する裁判例等の資料を可能な限り収集、精査して打ち合わせを重ねたうえで、適切妥当と考えられる最大額の金額を提示して交渉しています。

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医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

この記事を書いた⼈(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。
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